第37回 日本細菌学界中部支部総会

[目的] 
 マイタケ子実体MD分画(MDF:70%多糖体、30%蛋白)には、抗腫瘍、抗高血圧作用等多様な生物活性があることが報告されているが、その作用機序に関する研究は少ない。今回マクロファージ(MO)が産出した一酸化窒素(NO)の抗腫瘍作用に着目し、MDFのMOにおける誘導型NO合成酵素(iNOS)発現誘発作用とその癌細胞の生存率の及ぼす影響を検討した。

[材料と方法] 
1.細胞: MOとしてマウス由来RAW264.7(RAW)細胞を、標的癌細胞としてヒト肝癌由来huH−1細胞を用いた。両細胞ともに10%牛胎仔血清(非働化済)タルベッコMEM(DMEM)で培養した。 
2.薬剤:MDF,大腸菌O127:B8由来LPS及びiNOS阻害剤L-NAMEは血清不含DMEMに溶解後濾過滅菌し、同培地で適宜希釈して用いた。なお、MDF溶液(1mg/ml)のLPS(1μg/ml)は検出限界(5mg/ml)であった。
3.INOSmRNA発現検出とNO定量:3cmデッシュに3×10
6のRAW細胞を接種し、種々濃度MDF或いはLPS(1μg/ml)存在下で培養後、適時細胞より抽出したRNAを出発材料として、常法に従いRT-PCR法でiNOSmRNA及びGAPDI ImRNA(内部標準)発現を調べた。また、24穴プレートに1×106のRAW細胞を接種後同様に培養し、適時採取した培養上済のNO量をNOx−HPLCシステムで測定した。
4.hul-1-1細胞の生残率の測定:24穴トランスファー・ウエルドの層にhul-1-1細胞(1×10個/well)を接種し、上層をセットし種々濃度(0,30,100および300μg/ml)のMDF存在下で培養した。この際、上層の同数のRAW細胞を接種した群(R-)と非接種群(R)、また培地にさらにL-NAME(10mM)を添加した群(L+)と非添加群(L)を作製した。48時間培養後、上層を除去し、下層hul-1-1細胞にMTT試を入れ、生細胞より生じた青色発色度を570nmで測定し、生残細胞数を半定量化した。

[結果] 
1.MDFのiNOS発現誘発作用:10μ/mlMDFで24時間刺激したRAW細胞からは、iNOSバンドは検出されなかったが、30〜300μg/mlの濃度範囲では検出された。100μ/mlのMDF刺激とLPS刺激による経時的変化を見ると、LPS刺激では、6時間で検出され始め、同時にその時間がピークであり、以降漸次減少し、14時間では検出されなくなった。
一方、MDF刺激では、12時間から検出され始め、24時間をピークとして漸次減少していったが、48時間でも僅かながら検出された。検出バンドの濃さは、いずれの時間でもLPS刺激のほうが強かった。

2.産出NO量:無視激RAW細胞培養 上清のNO量は3μM程度であった。LPS刺激細胞では、12時間から50時間へと8.2μMから19.2μMと有意に増加していったが、50時間におけるNO量はLPS刺激細胞の産出量の約半分であった。

3.MDFのhul-1-1細胞の生残率に及ぼす影響:R-群ではL+/-に拘わらず、MDF(0μg/ml)対象細胞の発色度(0.560〜0.589)と優位さは無かった。しかしながら、R+・L-群では、対照細胞の0.576から0.293、0.228、0.188と濃度依存的にいずれの濃度においても有意に減少した。さらに、R+・L+群では、対照細胞の0.578に対し、0.518,0.472,0.443と発色度の回復が認められた。

[考察]
今回の研究から、MDFにはRAW細胞に対してiNOSmRNA発現誘発作用を示すことが明らかにされた。また、それにより産出されたNOがMDFの有する抗腫瘍作用に重要な役割を果たしていることが示唆された。MDFのiNOSmRNA発現およびNO産出誘発は、LPSに比べかなり緩慢であるが、持続性がある特徴を有していた。過剰なNO産出(細胞にダメージを与える)の有する主体に対する不利な面を考慮すると、MDFのこのような誘発様式は、主体にとってむしろ有利であることが考えられた。MDF刺激によるiNOSmRNA発現誘発が遅いことに関し、最初にINF-γを誘発し、それによる二次的誘発の可能性が考えられ現在検討中である。


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