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物理学入門

21世紀の量子・エネルギー医学
面白くて、実はこんなに役に立つ物理学という学問

アイザック・ニュートンはこう言いました。 「私は、海岸で遊んでいる子どものようなもの。ときに、なめらかな小石を見つけたり、綺麗な貝を見つけたりして、はしゃいでいる存在にすぎない。目の前には手も触れられていない真理の大海原が横たわっているというのに…」 重力の法則や古典力学が確立されてから400年近く経った今でもこの世界は不思議なことで満ちています。わからないことであふれています。そうした謎に対して子どもが「なぜ?」と思うような純真な心で解き明かしていくのが物理学の真の姿です。

 人類が、何百年の時をかけて少しずつ解き明かしてきた謎は、観測、研究技術が飛躍的に進歩する今、新たな展開へと向かおうとしています。また物理学には、謎を解き明かす面白さだけではない、たくさんの魅力があります。今回は、日々アップデートされる物理学の最新の研究成果に触れながら、「物理学」という学問の面白さや可能性について紹介します。

ワクワクできて、案外、社会性もある。それが物理学の魅力!

■物理学の強みとは?

物理学はすべての基礎になる

まず、物理のことを語る前に、理学についてお話ししましょう。 「どうして、海は青いのか?」「なぜ、火は熱いのだろう?」多くの人がそんなふうに疑問を抱いたことがあるでしょう。同時に、ほとんどの人はそう思ったとしても、海は青いもの、火は熱いものという事実だけを受け止めて、その理由についてはスルーして過ごしているのではないでしょうか。しかし、理学は違います。その「どうして」「なぜ」を、そのままにせず、世界にあるあらゆる不思議が「どのようにしてできているか」を究明しようとする姿勢が備わった学問であるということができます。

 皆さんがこれまで学んできた高校の理科(理学)には物理を含め、化学、生物、地学と4つの科目があります。化学であれば物質の不思議を突き詰め、生物は生物、地学は地球環境というように、特定の現象を取り扱っています。ところが、物理では自然界で起こる出来事の背後にある基本法則や原理といった根本的な部分にスポットをあてています。例えば、「力が働くとどのような運動が実現するのか」、「エネルギーと熱はどのように変換されるのか」などの自然現象の法則です。

 これらの物理の基礎は、化学や生物、地学を学ぶ上でも、あるいは工学などの分野でも下敷きとなるベーシックな知識にもなってきます。さらに、大学で学ぶ物理では、力学、電磁気学、熱力学、量子力学、統計力学なども習熟し、基礎を深めていきます。こうした物理の基礎知識、あるいはものの考え方は、将来専門性を深める上でもきっと必要になり、様々な分野で横断的に使える知見になっていきます。

 「物理学ってどんな風に役立つのかピンとこない…」という高校生の皆さんには、その疑問への答えのひとつとして、さまざまな自然現象への理解をしっかりと固められることで、応用の幅が広がる、そんな強みのある学問のひとつであるとお伝えします。

■物理学の面白さ

今、エキサイティングなのは素粒子と宇宙の物理学

「物理が汎用性の高い学問であることはわかったけど、どんなところに面白さがあるの?」。皆さんが次に疑問を抱くのは、そうした点かもしれません。その答えのひとつが、物理は常にアップデートされている学問であるということかもしれません。

 例えば、16世紀のはじめにコペルニクスが地動説を唱えました。その考えを支持したケプラーが惑星の運動法則を見出し、そしてニュートンが1687年に発表した有名な「プリンキピア」の中で万有引力の法則の発見へとつながっていきました。

 地動説が証明されるまでおよそ100年以上の月日が費やされているのです。このように自然界における“常識”は、その時代の科学者によって常に更新されてきました。また、自然界における一部の側面がつまびらかになることで、また新しい疑問や謎が生まれるのも物理学の面白さであり、深みでもあります。

 近年の物理学においても、ノーベル物理学賞受賞でも話題になった「ニュートリノ振動」や「重力波の観測」といった大きな発見がありました。エキサイティングな話題で盛り上がり、これからさらなる進展が期待されるタイミングで物理学の門を叩ける皆さんは、とても幸運と言えるかもしれません。

■素粒子物理学の常識を覆したニュートリノ振動

イメージニュートリノとは「ニュートラル=電気を帯びていない」「イノ=(イタリア語で)小さい」素粒子という意味です。素粒子は物質を構成する最も小さい要素で、「分子>原子>原子核>核子>素粒子」に分けることができます。ニュートリノの存在は1930年にオーストリア出身の学者パウリによって予言されており、1956年には原子炉を使った実験でライネスとカワンという学者によって確認されるなど研究が続けられてきました。ニュートリノ研究が新たなステージに入ったのは1998年。日本のスーパーカミオカンデ検出装置を用いた大気ニュートリノ観測により、ニュートリノには振動現象が見られ、そのことから質量があることが突き止められました。

 素粒子の標準理論では質量がないと考えられていただけに、この発見は、素粒子物理学の世界に一石を投じる衝撃的なニュースとなり、2015年には東京大学の梶田隆章博士の研究がノーベル物理学賞にも選ばれました。ニュートリノは宇宙の中で光の次に多い素粒子であり、その性質を解明することで、宇宙の誕生や物質の起源を解き明かす手がかりになると考えられています。現在はスーパーカミオカンデよりもさらに巨大なハイパーカミオカンデの建設が計画されており、さらなる謎の解明が続けられています。

■アインシュタインの宿題に応えた重力波の観測

イメージ重力波は、2017年のノーベル物理学賞受賞で記憶に新しいトピックのひとつと言えるでしょう。重力波とは時空間の歪みによって起こる“時空のさざなみ”と形容される現象です(図1)。かの天才物理学者アインシュタインは、一般相対性理論に続く著作の中で「時空の歪みは波のように伝わっていく」と予言。重力波はブラックホール、あるいは中性子星同士の衝突によって発生するものと予測されていましたが、仮に発生したとしても、その波はあまりにも小さく(地球と太陽の距離が原子1個分変化する程度の大きさ!)人類が観測できることはないだろうとアインシュタイン自身も語っていたほどでした。

 しかし、予言からおよそ100年後、2015年9月にアメリカの重力波観測装置「LIGO」がそのわずかな時空の歪みを初めて検出し、世界中の研究者を驚かせました。この発見によりアインシュタインの理論が正しかったことが証明され、宇宙物理学の歴史に新たな1ページが書き加えられたのです。今後、重力波の観測は、重力波天文学という新たな分野の誕生とともに、宇宙がどのように誕生したかのナゾを解く新しい「目」としても期待されています。

■物理学が役立つフィールドとは?

実は幅広い分野に応用できる、物理学の考え方

物理学は、物の理(ことわり)を追究する学問です。そのため、人に役立つ何かを作るといった、直接的な社会貢献という側面ではほかの学問と比較すると弱いかもしれません。しかし、考え方を変えると、そうした文明発展の根底には物理学の考えが息づいていることを忘れてはなりません。私たちの生活の周辺を見渡しただけでも、明かりが部屋を照らし、移動するために電車のモーターが稼働し、スマートフォンの基板には半導体が使われ、私たちが過ごす家やビルも台風や地震にも倒れないように設計されています。これらすべてのことが物理学によって見出された法則に従って成り立っています。

 近年、物理学は工学をはじめ、生命科学、生物学、情報科学といった、さまざまな分野と連携を強める動きが見られるようになってきました。また、進路も、大学院に進む学生が多いのが特徴ではありますが、機械・電気・化学などをはじめとした製造の他、IT、医療といった業界から研究職として迎えられていることも多く、また、情報社会の発展などを背景にサービス業やコンサルティング業などへの進路も広がっています。そこでは物理学の知識そのものが役立つというよりも、わからないことに対して根本を理解し、解決策を理路整然と組み立てる力が高く評価されています。

 物理学を学ぶことで身につくものは、難しい問いや理論に繰り返し取り組むことで得られる粘り強さや、いろいろなことに疑問を持ち、探究する好奇心です。こうした力は、研究者として物理学を探究する上で役立つのはもちろんのこと、社会に出て仕事をする際、さまざまな場面で役に立ちます。「大学で物理学を勉強しても、役に立たないかもしれない」と迷っている人は、「なぜ」「どうして」を究明する学問そのものの面白さもさることながら、幅広い分野で活用できる、物理学の強みについても、考慮に入れてみてはいかがでしょうか。

■制作:理事長 山本 英夫

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