代替医療と西洋医療
「科学が発達しても根治できない難病」にどう対応するか?
代替医療と西洋医療が柔軟に特徴を生かす総合医療体制がもとめられています。現代医学は、科学的分析力に基づくハイテク治療を確立し、多くの領域で成果を上げていますが、それでもガンや生活習慣病などの難病・慢性病が増え続けています。そんな中、これらの病気に対し、代替療法を用いた治療法が注目されています。健康補助食品・漢方をはじめ、気功、呼吸法などの多彩なアプロ―チを駆使して人間の自然治癒方を回復させ、病気を治癒ヘと導くことが目的です。こうした医学的な流れは、人間を心身一体の全身的存在ととらえるホリスティック医学として日本でも認識され始めています。
代替療法と補完療法−−【代替医療−1】
代替療法を意味するものとして、欧米にはオルタナティブ(代替)と、コンプリメンタリー(補完)という2つの言葉がありますが、両方とも同じものを指しています。現状では近代西洋医学以外、すべて補完・代替療法と位置づけられています。中国医学の鍼灸や漢方、気功のほか、各種伝統医学、ホメオパシー(同種療法)、オステオパシー(整体)、カイロプラクテックなどを含めた、すべてが補完・代替と見なされています。
欧米では、もともと体制への反発や、生き方の問題として提起されてきたものですが、この一連の流れを医療の世界でも受け継ぎ、現代医療のあり方を見直し、新しい医療の流れをつくる意味で代替療法が導入されることになったのです。今でもイギリスの医療関係者は、「あくまで西洋医学を補完する手段でしかない」と強調しますが、内容的には、アメリカと同様にCAM(カム/コンプリメンタリー・オルタナティブ・メディシン:補完代替医療)として定着し始めているのが現状です。
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代替療法の現状−−【代替医療−2】
人間を全体としてみるホリステイツク医療を目指しての試み
西洋医学では、日本に限らず「科学的に検証されているものだけが本当の医療」という認識が強いようです。代替療法は検証性に欠け、あいまいな点が多いと思われています。現段階では、確かに科学的な検証は不十分ですが、患者さんを癒し、病気を治癒させる可能性も十分備わっています。
科学が進歩するにつれて代替療法について納得のいくデータが得られ、オーソドックスな医学療法として足場が築かれることを期待する医療関係者も増えてきました。社会的認知へ向け、科学的な検証を継続するとともに、さらに自然治癒力を引き出すための努力が求められています。そして、「もっとも肝心なことは、代替療法のオピニオンリーダー的な人達も、西洋医学の中心的立場の人も、互いに柔軟な思考を持ち、総合医療の発展を目指してほしい」という声が患者さんの中から出ていることです。
このー環として、最近では、代替療法の国際会議が盛んです。アメリカやイギリスなどの関係者を含めて具体的な代替療法の情報交換、討議が行われています。日本でも代替・相補・伝統医療連合会などが発足し、漢方の東洋医学会、歯科東洋医学会、アーユルヴェーダ(インド生命学)、アラビア医学など、代替療法と呼ばれている分野の関係者が集結し、新しい代替医療の確立を目指しています。そもそも、代替療法は、生命全体の現象について診ていく医学分野で、病気を作り出す原因から根絶します。癌(ガン)やアトピーなどの難病で注目が集まるのはそのためです。
代替療法から『統合医療』を目指すとき、伝統医学にみられる「お山の大将」という意識を捨て、まず代替療法側が足並みをそろえる必要があります。当然ながら西洋医学とミックスして、初めて『統合医学』が実現します。すでにアメリカやイギリスでは、この動きがかなり進んでいます。日本では、まだ代替療法同士が何となく協調していないのが現状です。
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代替療法の増加−−【代替医療−3】
―方で、ユーザー側をみると、代替療法を行っている人は、増加傾向にあります。例えば鮫の軟骨、キチン・キトサン、アガリスク、マイタケ、ザクロ、ウコンなど種々様々です。利用者の意識が「西洋医学だけ」から脱してきたのです。生命の本質は複雑ですから、患っている臓器だけをとらえるのではなく、総合生命学という観点で病気の治療に携わることが求められ始めたからです。
例えば、ホリスティック医学では、胃癌(ガン)が発症したら、その癌(ガン)細胞だけに目をとうじるだけでなく、体全体をチェックします。体に何らかのゆがみが生じて、たまたま胃にその症状が現れたという考え方に基き、食生活や人間関係、ストレスなどの日常生活全般を見直して病気に対応します。人間を心身一体の全体的存在としてとらえる「ホリスティック思想」は、患者さんの二―ズから生まれたものでもあるのです。