マルチカロテノイド海外臨床文献集
マルチカロテノイド成分の効果について海外で発表された臨床文献の日本語訳です。
T肺癌
Individual Carotenoids in Etiology of Lung and Upper Aerodigestive Tract Cancer
1、肺癌及び上気道癌の発病における各種カロテノイド
要旨
群間試験において、血中のβ-カロチン濃度が高ければ、肺癌や他の癌の発病率が低くなることが予見されている。しかし、2件の無作為二盲件臨床試験で、β-カロチンの栄養補給により、肺癌の発病率が高くなるという結果が実際に得られている。我々は、血清中の主要な6種類のカロチノイドを分離、回収できる最も適した液体クロマトグラフィーの測定法を利用した。 肺癌(183)、食道がん(28)、喉頭がん(23)、口腔・喉頭癌(18)を発病した日系ハワイ人及び対応する対照者において、個々の人から提供・保存された血清中のカロチノイドを測定した。
α-カロチン、β-カロテン、β-クリプトキサチン及びリコペンの血清濃度の低下するに従い、肺癌の発病率が高くなった。最も強力な相関関係は、α-カロチンとβ-カロテンを組み合わせたときに見られ、α-カロテンとβ-カロテンの最も少ない1/3グループの男性は、喫煙補正後の最も高い1/4グループよりも発病率は1.6?1.7倍も多く、予防効果はβ-カロテンよりもα-カロテンの方が強かった。三種類の癌をあわせると、血清濃度は対照者よりも、発病している人の方がα-カロテンで29%(補正平均値の相対的差)、β-クリプトキサンチンで20%低く、癌の発現部位ごとに関しては、α-カロテンに著しい相違が認められた。
他のカロテノイド及び植物成分が癌の発病率の低減を部分的に説明している可能性があるが、観察的疫学的研究においては一般的にα-カロテンに起因すると考える。
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2、抗酸化栄養成分と肺癌の発病率:ウルグアイにおける症例-対照試験
Dietary Antioxidants and Lung Cancer Risk:A Case-Control Study in Uruguay
2、抗酸化栄養成分と肺癌の発病率:ウルグアイにおける症例-対照試験
要旨
肺癌の発病における抗酸化栄養素(カロテン、ビタミンC、ビタミンE、グルタチオン及びフラボノイド)の予防的役割を調べるために、肺癌患者541人及び入院中の対照者540人を含めた症例-対照試験をウルグワイで行なった。相当する変数を残存法で熱量補正した後、4つのグループに分類した。抗酸化栄養素に対する補正後のOdds ratio(Ors)を無条件にlogistic回帰解析によって計算した。
リコペン及びビタミンCを例外とし、残りの抗酸化栄養素は肺癌の発病率の低減と著しい相関が認められた。特に興味深かったのは、栄養素グルタチオンと肺癌との間に逆の相関関係が認められたことである(グルタチオンを最も多く摂取した1/4グループの最も少なく摂取した1/4に対するORsは、0.442、95%信頼区間(CI)は0.27〜0.63であった)
また、カロテノイド及びビタミンEにも肺癌の発病率の著しい低減ガ認められた(総カロテノイドについては、OR=0.43、95%CI=0.29?0.64で、ビタミンEについては、OR=0.32、95%CI=0.39〜0.85であった)。β-カロテンとグルタチオンを合わせた時の低摂取と高摂取に対する効果は、著しい発病率の低減と相関関係が認められた(Or=0.32、95% CI=0.22?0.46)。
抗酸化栄養素は、肺癌の著しい予防効果と相関しており、グルタチオンの逆の相関関係は野菜や果実の補正後も維持されると結論される。
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An Ecological Study of Diet and Lung Cancer in the South Pacific
3、南太平洋における食事と肺癌の生態学的研究
要旨
フィジー島においては、肺癌の発病率は、喫煙率が同じであるにもかかわらず、南太平洋の外の島よりも著しく低い。我々は、南太平洋の数カ国の島で、全住民に基づいた調査を実施し、ハワイにおける肺癌の症例-対照試験で使用されたコーカサス人、日本人、ハワイ人、フィリピン人及び中国人を対照者のデータを使用して20の人種-性別間での肺癌の発病率の相違を説明できる栄養成分の役割を調査した。
肺癌の発病率を禁煙、食事及び他の変数について段階的直線回帰解析をおこなったが、予想通り、喫煙は発病率の相違の大部分(61%)を説明できるが、数種類の栄養成分も相違の大部分を説明している。ルテインの摂取は相違の14%を説明しており、ビタミンE、コレステロール及び身長も発病率の残りの相違の5〜7%を説明している。
ルテインとビタミンEについての相関は、逆の比例関係にあったが、コレステロールと身長については直線的関係にあった。栄養素のβ-カロテンの摂取は、肺癌の発病率とは相関関係が認められなかった。これらの生態学的データは、肺癌に対する予防効果の証拠を示している。栄養素ビタミンEの予防効果及びコレステロールの発病率を高める作用が示唆された。
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U子宮頚部癌
4、全住民に基づいた巣温め症例-対照試験における血清 微量栄養素と子宮頚部癌の発病率
Serum Micronutrients and the Subsequent Risk of Cervical in a Population-based Case-Control Study
4、全住民に基づいた巣温め症例-対照試験における血清 微量栄養素と子宮頚部癌の発病率
要旨
血清の微量栄養素の低濃度が子宮頚部癌の発病率に関係があるか調べるために、メリーランド州のワシントン郡で巣温めの症例-対照試験を実施した。1974年の献血清運動の間に将来の癌研究のために献血をした15,161人の女性で、1975年の1月から1990年の5月までの間に、18人が浸襲性の子宮頚部癌の発病し、32人が子宮頚部癌を発病した。これら50症例に対し、同じ郡から二組の対応する対照を選び出した。
症例者及び対照者の凍結した血清について数種類の栄養素を分析した。総カロチノイド、α-カロテン、クリプトキサンチン及びリコピンの平均血清濃度は、対照者よりも症例者の方が低かった。
濃度を3つのグループに分けた内の最も高い1/3グループで比較すると、総カロテノイド、α-カロテン、β-カロテン濃度の最も低い1/3のグループの女性は、これら濃度の高い1/3のグループと比較し、子宮頚部癌の発病率が著しく高く(総カロテノイド、Odds ratio=2.7;95%信頼限界=1.2?6.4)、(α-カロテン、Odds ratio=3.1;95%信頼限度=1.3?7.6)、(β-カロテン、Odds ratio=3.1;95%信頼限界=1.2?8.1)、傾向は統計学的に有意であった。
連続変数として検定したとき、クリプトキサンチンは、子宮頚部癌の発病の低減と著しい相関が認められた。レチノール、ルテイン、α-及びγ-トコフェロール及びセレニウムについては、子宮頚部癌の発病率との関連は認められなかった。喫煙は子宮頚部癌と強い相関が認められた。
これらの所見は、総カロチノイド、α-カロテン及びβ-カロチンの子宮頚部癌の予防効果を示唆するものであり、更には、クリプトキサンチン及びリコペンについてその可能性を示唆している。
緒言
子宮頚部癌は、米国のラテン人における3番目に多い癌であり、他の白人女性において6番目に多い癌である。発展途上国では、子宮頚部癌は、癌による死亡の主要な原因であり、女性における最も多い癌である。癌と食事の相関を示す証拠は、ここ数十年間注目を集めている。
レチノール、β-カロテン、ビタミンC、α-トコフェロール及びセレニウムは、ガンの分野で最も多く研究されている栄養素である。子宮頚部癌に対して、これら微量栄養素との相関を調べた疫学的証拠は僅かしかない。子宮頚部新生物とレチノール[3-10]、β-カロテン[3、5、7-9、11-13、14]、α-カロテン[15-17]、ルテイン、クリプトキサンチン、リコペン[14]、葉酸[15、17]、α-トコフェロール[6、8、18]及びセレニウム[10、19]の血清濃度との相関を多くの疫学的調査により調べている。
これらの試験の大部分は、地域限定の症例-対照試験であり、発病した後に血清を入手しているので、発病による栄養への効果は評価されていない。診断される前の血清を使用している研究は、Coates等[10]及びKnekt等[9、18]によって行なわれている。しかし、子宮頚部癌の症例数は少なかったので(Coates等の研究では12例、Knekt等の研究では23例)、信頼のある症例-対照試験を行なうことは出来なかった。
総合的に見た証拠は、子宮頚部癌に対するβ-カロテン予防効果を示唆するものに過ぎない。この巣温めの症例-対照試験において、我々は、レチノール、α-トコフェノール、セレニウム及び種々のカロチノイドの診察前血清濃度と子宮頚部癌の発病率との相関を調査した。またさらに、子宮頚部癌とγ-トコフェノールとの相関も調査した。アスコルビン酸については、保存剤を使用することなく、血清を保存している間に完全に消失したので、検討することができなかった。
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V 癌細胞の増殖抑制
5、人の神経芽細胞腫の細胞線GOTOの増殖に対すα―カルテンの抑制効果
Inhibitory Effects of α-Carotene on Proliferation of the Human Neuroblasto Cell Line GOTO
5、人の神経芽細胞腫の細胞線GOTOの増殖に対すα―カルテンの抑制効果
要旨
α―カルテンは、容量依存的に、また時間依存的に人の神経芽細胞腫の細胞線GOTOの増殖を抑制した。さらに、α-カロテンの抑制効果は、β-カロテンの約10倍であった。Northem Blot分析により、GOTO細胞のN―mycメッセンジャーRNA濃度を最大限に抑制することが判明した。
この抑制作用は、α-カロテンの投与後の18時間以内に発見し、その後は、N―myeメッセンジャーRNA濃度は投与前の規定値に戻った。血球流速の測定により、GOTO細胞にα-カロテンを加えると、それらの細胞分裂周期のG〜G相での休止状態であった。しかし、N―mycメッセンジャーRNAの濃度が回復すると、これらの細胞は正常な分裂周期に戻る。これらの結果は、α-カロテンによって生じたN-mycメッセンジャーRNAの濃度の減少は、G0〜G1相での休止と密接な関係がある。
緒言
食事中のカロテノイドの主な材料は、緑黄色野菜である。β-カロテンは自然界に最も広く存在しているカロテノイドであるが、それはしばしば、少量のα-カロチン及び微量のγ-カロテン、更には高等植物中のリコピンも含まれている。更に、人間の血清中には、β-カロテンばかりでなくα-カロテンも確認されている。それゆえに、種々のカロチノイド抗癌活性をもっと詳しく調査することは意義あることである。
以前行なわれた試験で、我々は、椰子油から抽出した天然のカロテン類が種々の人の悪性腫瘍、例えば、GOTO(神経芽細胞腫)、PANC-1(膵臓癌)、A172(神経膠芽細胞腫)、及びHOC-27(胃癌)の細胞増殖を止めることを明らかにしました。椰子油に含まれるカロテン成分及びその含有率は、ニンジンに含まれているものとはほぼ同じであることが分かっている。
例えば、椰子油のカロテン類は、α-カロテンが30%で、β-カロテンは60%、他のカロテノイド類が10%である。我々は、これらのがん細胞の増殖に対するα-カロテンとβ-カロテンの効果を比較した。その結果、α-カロテンはβ-カロテンよりも強い抗増殖効果のあることが分かった。更に、α-カロテンは、GOTO細胞の形態学上の分化を引き起こすこともわかった。
本研究において、我々は、そのようなα-カロテンの生物学的活性は、GOTO細胞の分裂周期のG0〜G1相において休止する結果として現れ、N-mycメッセンジャーRNA濃度の減少をきたす。
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W 癌死亡率とカロチノイド
6、老齢者における緑黄色野菜の摂取量の増加と癌による死亡率の低減
Increased green and yellow vegetable intake and lowered cancer deaths in an elderly population
6、老齢者における緑黄色野菜の摂取量の増加と癌による死亡率の低減
要旨
66歳以上のマサチューセッツ住民1271人の予測的群間試験において、カロチン含有野菜の摂取量と5年間の死亡率を調査した。食事上の情報は、食事回数質問表によって得た。癌による相対的な死亡率を緑黄色野菜の摂取点数(ニンジン又はカボチャ、トマト、サラダ又は葉の多い野菜、乾燥果実、新鮮なイチゴ又は新鮮なメロン、及びブロッコリー又は芽キャベツの摂取量から計算)で区分した1/5グループ毎に調査した。
年齢及び喫煙について補正した後、これら露天を含んでいる野菜の最も多く摂取した1/5グループの人たちは、癌の死亡率は、最も摂取量の少なかった1/5グループの死亡率の0.3であった(95%信頼限界=0.10?0.96)。カロテン含有野菜の摂取量の増加に伴い癌の発病率の低減する傾向は、顕著であった(P=0.026)。この相関は、カロテンが発癌を防止する栄養素として作用するという仮説と一致してする。
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X 大腸癌
Carotenoids and colon cancer
7、カロテノイドと大腸がん
経緯
カロテノイドは、種々の生物化学的作用を持ってやり、化学予防栄養素として役割の基礎となっている。しかし、β-カロテンは例外として、栄養素カロテノイドが大腸がんを含めた癌とどのような関連があるかどうかほとんど分かっていない。
目的
この試験の目的は栄養素のα-カロテン、β-カロテン、リコペン、ルティン、ゼアキサンチン及びβ-クリプトキサンチンと大腸がんとの相関を究明することであった。
方法
原発性の大腸腺がんと診断された1993症例及び住民に基づいた2410人の対照者から データを集めた。栄養に関するデータは、詳細な食事摂取暦の質問表から集め、カロテノイド類の栄養価は、US Department of Agriculture-Nutrition Coordinating Center のカロテノイドデータベースを利用した(1998年版)。
結果
ルテインは、男性及び女性において大腸がんとの相関が認められた「摂取量の最も少なかった1/5グループに対する摂取量の最も多かった1/5グループのOdds ratio(OR)=0.93;95%信頼区分(CI)=0.66.1.04;直線的傾向P=0.44。
最も大きな逆の相関は、若い時の診断で大腸がんと診断された対象者(OR=06.65;95%CI=0.48、0.92;傾向P値=0.02)及び大腸の近位分節に腫瘍のある対象者(OR=0.65;95%=0.52、0.91;P<0.01)に観察された。他のカロテノイドについては、顕著な相関は認められなかった。
結論
大腸がんの症例対象者及び対照者におけるルテインの主な栄養源は、ほうれん草、ブロッコリー、レタス、トマト、ミカンしオレンジジュース、ニンジン、セロリ及び緑色野菜であった。この試験データは、これらの食品を食事に加えることにより、大腸がんの発症率を低減する助けになることを示唆している。
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Y 前立腺癌
8、トマトトマトを原料として製品、リコペンと癌:疫学的文献の総括
Tomato, Tomato-Based Products, Ltcopene, and Cancer,Review of Epidemiological Literature
8、トマトトマトを原料として製品、リコペンと癌:疫学的文献の総括
要旨
トマト及びトマト原料製品の摂取及び血液中のリコペン(主にトマトに由来する成分)濃度と主種々の癌の発病率に関する英文の疫学調査文献を考察した。72件の文献の内、57件の文献では、トマトの摂取及び血中のリコペン濃度と解剖学的に定められた部位の癌の発病率との間に相関関係が報告されている。
これらのうち35件は、相関関係は統計学的に有意であった。トマトを多量に摂取すること及び血中高リコペン濃度が、調査された部位の癌の発病率を統計学的に高くするという報告は一件もなかった。トマトの摂取量が低いか、リコペンの血中濃度が低くて、癌の発病率の高い人との比較において、癌の相対的発病率の半分は、0.6以下であった。効果を示している証拠が最も強かったのは前立腺癌、肺癌及び胃癌であった。
効果を示唆しているデータは、膵臓癌、大腸癌と直腸癌、食道癌、口腔癌、乳癌、子宮癌であった。データは観察的研究によって得られたものであったので、癌の原因と効果の相関は明確に確率することは出来ていない。しかし、症例-対照の予測的試験で、食事に基づいたり、血液濃度の基づいた調査で、非常に広い範囲にわたった母集団における膨大な研究結果の一貫性は、これらの所見に対する説明としてのバイアスや混乱をなくしている。
リコペンは、これらの効果を説明し、貢献している可能性があるが、これについてはいまだ証明されておらず、今後更に試験を行わなくてはならない。トマトの中には、他の多くの効果のある化合物が存在しており、これらの化合物の復合的相互作用によって、トマトの抗癌効果を示している可能性がある。トマトやトマトの原料製品の多量摂取に関連して種々の解剖学的部位の癌の発病率を一貫して下げていることは、果実や野菜の摂取量を増やすという現行の栄養摂取の薦めを支持している。
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9、血漿リコペン濃度を高めることにより男性前立腺癌の発病率の低下:予測的統計解析結果
Lower Prostate Cancer Risk in Men with Elevated Plasma Lycopene Levels:Results of a Prospective Analysis
9、血漿リコペン濃度を高めることにより男性前立腺癌の発病率の低下:予測的統計解析結果
要旨
カルテノイドであるリコペン(ほとんどはトマト製品に由来する)を摂取することは、前立腺癌の発病率の低減と相関関係がある。前立腺癌の発病率に対する他のカルテノイド、ビタミンE及びビタミンAの効果は、明確になっていない。本予測的研究は、主な数類の抗酸化栄養素と前立腺癌の発病率との相関を調査することであった。
アスピリンとβ-カロテンを用いたプラセボとの比較による臨床試験であるPhysicians’HealthStudyに参加した健康な男性1982年に入手した血漿サンプルを使用して、症例-対照の巣立ち試験を実施した。対象者は、その後、13年以内の観察期間に前立腺癌を発病dq578
人の男性で、年齢、喫煙状態の類似した1294人の男性が対象者あった。我々は、液体クロマトグラフィーを使用し、主要な5種類の血漿カロテノイド(α-及びβ-カロチン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、リコペン)濃度及びα-及びγ-トコフェロー.ル(ビタミンE)、レチノ-ル(ビタミンA)の血漿濃度も定量した。β-カロテン血漿濃度については、別途報告している。
Odd比、95%信頼区間、傾向を示すPs値を、Logistic回帰分析モデルを使用し、各抗酸化栄養素の濃度の5分画について計算した。回帰分析モデルは、混同要因を補正し、効果をβカロテン及びβ-カロテン及びプラセボのいずれかに帰結できるものであった。
症例対象者は、対象者に比較し、抗酸化栄養素の中でリコペンのみが著しく低い平均値を示していた(全症例に対しP=0.04)。全ての前立腺癌に対するOdd ratioは、血漿リコペン濃度増加する1/5分画ごとにわずかに減少している傾向があった(最も濃度の高い1/5分画のOdd ratio=0.75,95%信頼区間=0.54-1.06傾向0.12)。
プラセボグループにおいては、血漿リコペン濃度が前立腺癌の発病率の低下と強い相関が認められた(リコペン濃度のもつと高い1/5のOdds ratio=0.40,進行性の癌に対する傾向P=0.006)が、β-カロテンを割り付けられたグループでは、前立腺癌の発病率は、リコペンの摂取の少ない男性及びプラセボを摂取した男性に対し、リコペン濃度が増える1/5区画毎に低減していた。
他に観察された唯一の傾向は、統計的有意差はなかったが、α-トコフェロー.ルの摂取量の多い場合における進行性の癌の発病率の低減であった。リコペンについて観察された相関は、年齢、喫煙、BMI(肥満度)、運動、お酒、マルチビタミン及びコレステロール濃度で影響されるものでなかった。
これらの結果は、最近行なわれている予測的栄養統計解析の結果とも一致しており、リコペンは前立腺癌の発病に関連した最も明確な逆な相関のあるカロテノイドと確認されている。この逆の相関は、進行性の癌に対しても最も明確であり、β-カロテンの摂取量の少ない男性に対して明確である。
リコペンの摂取量の少ない男性は、β-カロテンの栄養補助により、リコペンを多く摂取している男性と同程度に発病率が低下する。これらのデータは、トマト製品や他のトマト含有食品の摂取量を増加させることにより、前立腺癌の発病率を低減し、前立腺癌の進行を遅らせるという証拠を更に示すものである。
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10、前立腺癌の発病率に関連したカロテノイドとレチノールとレチノールの摂取
Intake of Carotenoids and Retinol in Relation to Risk of Prostate Cancer
10、前立腺癌の発病率に関連したカロテノイドとレチノールとレチノールの摂取
経緯
幾つかの人間での研究で、レチノール(ビタミンA)の摂取と前立腺癌の発病率との間に正比例の関係が観察されている。他の研究では、β-カロテン(ビタミンAの前駆物質)の摂取と前立腺癌との間に逆の相関ま、相関関係も認められていない。前立腺癌の発病率に関するβ-カロテン以外のカロテノイドについてのデータはほとんどない。
目的
我々は、種々のカロテノイド、レチノール、果実及び野菜の摂取と前立腺癌の発病率との間の相関を調査するために予測的群間試験を行なった。
方法
1989年に行なわれたHealth Professionals Follow-Studyに参加した人たちに有効であることが検証された半定量的な食事質問表に対する回答を使用し、当初癌のない一群の47,894人に対して1年間の食事摂取について評価した。追加の質問表を全員に1988年、1990年、1992年に送付した。
我々は、各々の特殊な食品及び栄養素を多く摂取したグループの前立腺癌の発病率を摂取量 の少ないグループの発病率で割ることに余って、多く摂取したグループに対する相対的な発病率(RR)を計算した。全てのP値は、両側検定で得た。
結果
1986年から1992年までの間に、非ステージA1の773症例を含めて812症例が前立腺癌と診断された。カロテノイドであるβ-カロテン、α-カロテン、ルテイン及びβ-クリプトキサンチンの摂取は、非ステージA1の前立腺癌発病率との相関は認められなかったが、唯一、リコペンの摂取だけが前立腺癌の発病率の低減と相関関係が認められた(年齢、カロリー補正後のRR=0.79,摂取量の少ない1/5に対する摂取量の多い1/5の95%信頼区間[CI]=0.64〜0.99,傾向P値=0.04)。46種類の野菜とその関連製品の内、4種類は前立腺癌の発病率の低下と相関関係があった。
それらは、トマトソース(傾向P値=0.001)、トマト(傾向P値=0.04)、ピザ(傾向P値=0.001)であり、リコペンを多く含んでいるが、残りのイチゴはリコペンを含んでいない。トマト、トマトソース、トマトジュース及びピザを一緒に摂取することは、前立腺癌の発病率(多変量RR=0.65、1週間に1.5回以下の摂取に対し、10回以上摂取している場合の95%信頼区間=0.44〜0.95、傾向P値=0.01)及び進行した前立腺癌(多変量RR=0.47、95%信頼区間=0.22〜1.00、傾向P値=0.03)と逆の相関関係が認められている。レチノールの摂取と前立腺癌との間には、一貫性ある相関は認められなかった。
結論
これらの所見は、トマトに含まれているリコペン又は栄養成分は、前立腺癌の発病率を低減することを示唆しているが、測定された他のカロテノイドには発病率との相関は認められなかった。
意味すること
我々の観察結果は、癌の発病率を低減するために、野菜や果実の摂取量を増やすという薦めを支持しているが、トマト加工食品は、特に前立腺癌の発病率低減に有効であることを示唆している。
緒言
西洋諸国全体にわたって前立腺癌は、増加しつつある問題である。発病率の低減あるいは治療の改善がなければ、米国では、2000年までに約40,000人の男性がこの悪性腫瘍で死ぬこととなる。進行した前立腺癌の治療の成功率は非常に低く、この悪性腫瘍の発病率に影響を与える栄養素、特に動物脂肪、レチノール、カロテノイドに注目が集まっています。
適切な量のビタミンA及びレチノールは、細胞分裂及び細胞増殖に必要であり、実験動物において、種々のレチノイドは、前立腺癌を含め発癌わ防止する能力があることが示されている。
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Z 乳癌
Lutein and Zeaxanthin Inhibit HumanBreast Cancer Cell Proliferation
11、ルテイン及びゼアキサンチンは乳癌細胞の増殖を抑制する
要旨
以前に行ったバイオアッセイ導入によるvacccinium myrtillus(bilberry:びるべりー)の抽出分画から得られたヘキサン可溶性分画がエストロゲン受容体陽性(ER+)及びER人乳癌細胞の増殖を抑制することを観察した。引き続き、その分画の主成分をカロテノイドであるルテイン及びビゼアキサンチンであることを同定した。
ER+人乳癌細胞(MCF-7)の培養液にルテイン及びゼアキサンチン添加すると、細胞すると、細胞分裂が著しく抑制することが分かった。ルテイン及びゼアキサンチンを添加した培養液のIC値は、それぞれ2.0μM及びであった。この2種類のカロテノイドは、人乳癌細胞に対し増殖抑制剤として作用する。
12、乳癌におけるカロチノイド及びビタミンAとエストロゲン受容体との関係
Carotenoid、vitamin A and Estrogen Receptor Status in Breast Cabcer
12、乳癌におけるカロチノイド及びビタミンAとエストロゲン受容体との関係
要旨
乳癌の患者において、エストロゲン受容体(ER)の存在する腫瘍は、受容体のない腫瘍に比較し、ホルモン療法に対する生存率も高く、回復率も高い。この症例比較による研究の目的は、乳癌と診断された女性で、カロテノイドとビタミンAの摂取量と腫瘍ER状態との相関を調べることであった。この研究の第一の目標は、栄養摂取と腫瘍ER状態との相関関係確認することで、第二の目標は、腫瘍ER状態と血漿カロテノイド、ビタミンA及びビタミンEの濃度との相関を確認することであった。
我々は、142人の女性の腫瘍ER状態と自己報告に基づいた食事摂取を調べ、乳癌と診断したときに、医薬品による治療や外科的手術を行うナー前に、149人の女性のカロテノイドとビタミンA及びビタミンEの血漿濃度を評価した。最初の研究では、ER陽性の状態の総合的なOdds ratioは、過去5年間に行われたレントゲン撮影の回数、母乳で育てた子供の数、カロテノイドの摂取量及び黄色/緑色野菜の摂取量に応じて増加していた。
ER陽性の状態は、避妊薬の使用年数及びビタミンAの摂取量に応じて減少していた。第二の研究では、高齢の女性、血漿ルテイン濃度の高い女性、β-カロテンの栄養補助食品を摂取していない女性は、BMI肥満度及び乳癌発病率及びホルモン状態に影響をあたえる要因を補正した後の解析で、ER陽性である傾向が認められた。
血漿ビタミンA又はビタミンEの濃度とER状態との間には別々の著しい相関が観察された。カロテノイド摂取、血漿ルテイン濃度とER状態との間に認められた強い別々の相関は、乳癌と診断された後にカロテノイドを豊富に含む食事の摂取により改善される可能性を示している。
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13、乳癌のインド婦人における血清カロチノイド濃度についてのインドチェンナイでの研究
A Study on Serum Carotenoid Levels in Breast Cancer Patients of Indian Women in Chennai(Madras)、India.
13、乳癌のインド婦人における血清カロチノイド濃度についてのインドチェンナイでの研究
要旨
乳癌206症例が、インドチェンナイの癌研究所で組織解剖学的に乳癌と診断された。対照者は、乳房及び生殖器官以外の部位に癌がある150人の入院患者と癌研究所で患者に付き添っている健康な人61人であった。β-カロチン、リコペン、クリプトキサンチン及びルテイン/ゼアキサンチンのようなカロチノイドの血清濃度をHPLC法で測定した。
色の付いた野菜や果実の食品摂取を反映しており、ある部位の癌の予防効果のあるβ-カロチンを含めた総カロチン及び総カロチノイドの血清濃度が、乳癌の症例及び入院対照者は健康な対照者に比較し、著しく低く、特に閉経後の女性は低かった。閉経前の女性では、乳癌患者は健康な対照者に比較し、キサントフィルの結成が著しく低かったが、閉経前の女性では異なっていた。
乳癌患者におけるビタミンA及びビタミンEの血清濃度は、閉経後の健康な女性の濃度より著しく異なっていたが、入院対照者よりも高い値であった。血清エストロン濃度は、健康な対照者よりも乳癌症例の方が著しく高かったが、エストラジオール及びエストリオールの血清濃度は低かった。
結論として、乳房又は他の部位に癌のあるインドの婦人は、β-カロテンやルティン/ゼアキサンチンのようなカロチノイドや繊維を豊富に含む緑黄色野菜の摂取量が低いことが考えられる。
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14、乳癌発病率に関連したニンジン、ほうれん草及びビタミンA含有栄養補助食品の摂取
Intake of Carrots、Spinach、and Supplements Containing Vitamin A in Relation to Risk Of Breast Cancers`
14、乳癌発病率に関連したニンジン、ほうれん草及びビタミンA含有栄養補助食品の摂取
要旨
幾つかの研究で、果実、野菜、ビタミンA及び関連栄養成分の摂取は、乳癌の発病率の低減と相関関係があると報告されているが、もっと多くのデータの裏づけが必要である。β-カルテン及びビタミンAの摂取量を評価するために、我々は、1988年から1991年の間にメイン州、マサチューセッツ州、ニューハンプシャー州及びウィスコンシン州で実施された乳癌発病率に住民に基づいた症例-対照試験において、食事及び栄養補助食品の使用についての9項目の質問を用意した。
多変数補正モデルによって、3543人の症例及び9406の対照者のデータを解析した。ニンジンほうれん草を1週間に2回以上食べることは、全く食べていない場合に比較し、乳癌発病率の低減と相関していた。評価したあらゆる食品及び栄養補助食品から計算されたビタミンAの前駆物質低下を示していた。
これらのデータは、ニンジンやほうれん草の摂取と乳癌の発病率との間に観察された予防的相関関係を説明する幾つかの仮説を明確にすることは出来なかった。しかし、観察結果は、これらの食品を豊富に含む食事は、適度な予防効果があるという研究結果と一致していた。
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15、栄養素カロテノイド類、ビタミンA、C、Eと乳癌の発病率
Dietary Carotenoids and Vitamins A、C、and E and Risk of Breast Cancer
15、栄養素カロテノイド類、ビタミンA、C、Eと乳癌の発病率
経緯
特殊なカロチノイド類の摂取と乳癌の発病率についてのデータは非常に少ない。更に、ビタミンA、C、Eと乳癌の発病率についての研究は、まだ結論が出ていない。我々は、これらの栄養素の長期摂取と乳癌の発病率との相関を評価するために、大規模な予測的試験を実施した。
方法
我々は、多変量解析法を用いて特殊なカロテノイド類、ビタミンA、C、Eの摂取、果実や野菜の摂取と乳癌の発病率との相関を、看護婦健康試験(Nurses` Health Study)に参加した83,234人の婦人(年令33?60歳,1980年)で調査した。1994年までに、拡散性乳癌が2,697症例を診断した(閉経前の人784症例、閉経後の人1913症例)。
結果
食品や栄養補助食品からのビタミンA摂取、食品からのルティンやゼアキサンチンの摂取が閉経前の婦人での乳癌の発病率と弱い逆の相関が認められた。また、α-カロテン、β-カロテン、ルテイン/ゼアキサンチン、食品からの総ビタミンC及び総ビタミンAの摂取量が多くなるに従い、また乳癌の家族暦のある閉経前の女性において強い逆の相関関係が認められた。
また、1日に15g以上のお酒を飲む閉経前の女性では、β-カロテンの摂取量が増えるに従い乳癌発病との逆の相関関係が認められた。果実や野菜を1日に5回以上摂取している閉経前の女性は、1日に2回以下しか摂取していない時世よりも乳癌の発病率が適度に低下していた(相対発病率【PR】=0.77;信頼区間【CI】=0.58?1.02)。この相関は、乳癌の家族暦のある又はお酒を1日15g以上閉経前の女性では一層強かった。
結論
特殊なカロチノイドを豊富に含んでいる果実や野菜及びビタミンを摂取することにより、閉経前の女性の乳癌の発病率を低下すると考える。